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映画「もののけ姫」に見る高殿の描写について
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     映画「もののけ姫」の舞台は明確には判断できないが、江戸時代よりさらに古い時代の日本が舞台になっている。女首領のエボシが治めるのはたたら産業を中心とした集落である。集落の中心に描かれる高殿は非常に特殊な建築物だが、今回は高殿とそれを含む集落の構成について文献の調査を行った。

     たたらとは日本古来の製鉄方法で、高殿(たかどの)と呼ばれる製鉄の主施設を中心として、周辺に関係者が集落を形成していた。なお、島根県雲南市には高殿が1棟現存している(図2)。日本建築学会の論文データベースによると高殿やたたらに関する研究は多くはない。

     

     たたら製鉄の製造術の調査およびその再現実験の試み(材料・施工)(著者名:森田 鉄也 / 大木 崇輔 / 中田善久)2008年

      この研究では純粋にたたらの炉に着目し、当時の製鉄技術の再現を目指したものである。

     

     西下野の〈たたら〉遺跡 : 高殿の1新例 : 建築経済・住宅問題(著者名:多淵 敏樹)1973年

      この研究は中毒自動車道の工事時に出土した奈良〜平安時代の高殿の遺跡5例を採集したもので、映画に描かれたものより小規模な事例を扱っている(ように見える)。なおこの遺跡のうち保存がなされたものについてはたたらの里学習館として施設が建設されているようだ。

     

     たたら場における生活空間の構成に関する研究 : 島根県雲南市吉田町菅谷たたら山内を事例として(著者名:安部 悠 / 内田 文雄)2011年

     これは国内に唯一現存する島根県の菅谷集落に焦点を当てたもので、おもに集落内の社会制度を取り扱っており、梗概を読む限りではタイトルにある生活空間に関しての言及は見られず、唯一文末に建物の配置状況に影響があったことのみが書かれている。社会制度については詳細な調査を行っているようなので、それらが生活空間の構成にどのように影響しているか、非常に興味深かったので個人的には惜しいという気持ちだ。

     

     また、鉄山秘書という資料が存在し、当時の記録が詳細に残されている。これについては原書未読なので今後また考察していきたい。

     

     建築を学ぶと教科書のように使われる太田博太郎著「図説日本住宅史」には、竪穴式住居と高殿が関連して紹介されている。未調査だが他文献で引用されている「関野克1938「鉄山秘書高殿に就いて」『考古学雑誌』28 / 林 謙作2004『縄紋時代史』雄山閣」を調べてみたい。

     竪穴式住居と高殿は主要な柱が掘っ立てであったり、入母屋屋根といった共通の構造形式を持っている。現存する菅谷集落のたたら場は竪穴式住居と似ているとは言い難い部分もあるが、内部の構造は類似しているし、上記の西下野の研究に紹介される遺構は竪穴式住居そのものにも見える。映画ではたたら場を巨大に見せる演出もあり史実通りでない可能性も高いが、掘立柱や構造に見る内部の描写はかなりリアリティを持って描かれている。

     竪穴式住居は一説では室町時代後期まで現役だったとされている、太田はその竪穴式が高殿として残ったと説いたが、研究として裏付けられてはいないようだ。

     

     上記のように高殿やたたら場についての建築分野の資料は多くないが、当面は未読図書を入手し、他の既往研究の存在についても調べてみる必要がある。

    | ウラノイエノケンチクカ | 伝統構法 | 19:28 | comments(0) | trackbacks(0) | - | -









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